島根女子大生遺棄事件を考える 6

再び日刊ゲンダイの記事を取り上げます。新たな報道ではなく、すでに「島根女子大生遺棄事件を考える 5」で取り上げたものだとおことわりしておきます


今回触れたいのは「酒鬼薔薇事件との関連性を疑う声もあった」とする部分です神戸の連続児童殺傷事件は猟奇殺人として知られていますが、島根県警の捜査員がその全容を理解しているのかどうかは疑問です
猟奇殺人だから、「犯人は酒鬼薔薇事件の模倣犯」という程度の推測かもしれません
事件の異常さ、残虐さばかりを強調しても、犯人像は浮かび上がってきません
近所でも有名な「ド変態」が犯人だとは限らず、その異常な性癖を誰にも知られずに隠している人物である可能性の方が高いと思われます
さて、話を神戸の連続児童殺傷事件と絡めたいのですが、遺体を切断して放置する手口が似ているから犯人は同じような人物だと考えるべきなのでしょうか?
このブログではさまざまな殺人事件について言及してきましたが、殺人は犯人独自の体験であり唯一の体験だと述べてきました
殺害し、遺体を切断し、遺棄するという行動が同じであっても、それは個々の犯人が独自に経験するプロセスであり、他人と比較することにさしたる意義はないのです
結果としてそれぞれの殺人犯の思考や行動は類似したものであるのかもしれません
ですが、殺人を思いつき計画し、被害者を物色し、つけ回し、拉致して殺害し、遺体を切断するという行為に、犯人は独自の意味を込めて遂行します。うまりオリジナルの内的物語に従い、段取りを進めるのです
それを神への儀式と呼ぶこともできますし(神戸事件)、「ひとを殺す経験がしたかった」(豊川事件)と表現する場合もあります
世間の耳目を集めた重要事件では、外見的な行動からこうした犯行や犯人を理解しようとするルポルタージュがいくつも出版されていますが、あまり有効な方法論だとは思いません
精神分析が唯一絶対に正しい方法論であるとは言いませんが、犯人の内面に抱える物語を荒唐無稽な妄想であると切り捨てるようなやり方では、「心の闇」に迫るなど無理な話です
今回の島根の事件でも、犯人は独自の内的物語を抱えており、被害者をいかに殺しその体を弄ぶか想像し、性的な快楽を求めていたと考えます
物語の内容そのものはどこかの誰かの物語と酷似していたとしても、それは犯人にとり唯一の、独自のものであり単なる模倣ではないのです
快楽を追求するため、実にさまざまな儀式やプロセスを捻出し、実行しようします
ですから世間一般の人からすれば奇妙奇天烈なさまざまな儀式、プロセスであったとしても、それは物語世界の中の話であって、現実検討能力失っているわけではありません。ましてや「現実とバーチャル世界の区別があいまいになってしまった」わけでもありません
この事件について当ブログでは以下のように言及しています

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朝日新聞社
朝日新聞大阪社会部

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