攻殻機動隊「ソリッド・ステート・ソサイエティ」

神山健治監督の攻殻機動隊シリーズ「ソリッド・ステート・ソサイエティ」を観たので思ったところを書きます
ネタバレがありますので、おことわりしておきます
前作シリーズでは公安九課の弱点(少数精鋭であるがゆえに層が薄く組織の規模も小さいため、捜査活動にも人的・組織的限界がある)が露呈したため、荒巻課長は質の低下は承知の上で課員の増強に努めてきたと作品の中で語っています
組織の有り様としてはその通りなのですが、ストーリー展開を見る限りこうした設定がまるで生かされていないのは残念です
ラストシーンで敵の本拠に乗り込むのが草薙素子とバトー、トグサの3人(荒巻課長も登場しますが)です。他のメンバーは登場しません
組織の拡充に努めてきたという設定も虚しく、これまでのシリーズ同様、草薙素子とバトーとトグサだけが活躍する展開です
少なくとも新人の一人や二人を加えるべきでしょう。たとえ敵にやられてあっさり殉職する役回りだとしても
その前の場面で、公安九課が保護していたこどもが失踪したとき、トグサが単独で現場へ向かいます。この行動も疑問です
現場指揮官になったトグサが単独行動に出るというのはあまりに不自然であり、軽率です。最小限でも新人を帯同し、ツーマン・セルで行動するべきところです
そして一番の問題は傀儡廻 (くぐつまわし)と呼ばれるハッカーです
原作コミックや映画版に登場した「人形遣い」とあまりに似通っているのが不満です
「わざとそうしているのだ」と制作側は主張するかもしれませんが、視聴者の側からすれば「人形遣い」の劣化コピーにしか見えません
「スタンド・アローン・コンプレックス」の「笑い男」の方がよほど際立った存在に見えます
あるいは「セカンド・ギグ」における合田一人の方がよほど個性的であり、その目的も手段も悪役にふさわしいものです
ですから観る側とすれば傀儡廻が「笑い男」や合田一人を超える存在でないと物足りないわけです
お約束の攻殻機動隊の世界の中で、草薙素子とバトーとトグサだけが活躍すれば視聴者は満足するはず、と監督は思っているのでしょうか?
前のシリーズを超える、もっとアグレッシブな内容を期待していただけにとても残念です

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