村上春樹「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」
新作「1Q84」が話題になっています。もう読まれた方もいて、あちこちのブログに感想が書かれています
自分はまだ読んでいませんが、そろそろ書店に行こうかなと思っています
今回は村上の小説の中で自分が一番好きな作品、「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を取り上げます
この作品を巡って繰り広げられた討論を掲載しているサイトがありますので、興味のある方は足を運んでください
この作品が提示している「世界の終わり」が何を示唆するものであるかはさまざまな意見があります
ただ、20世紀の終わりに登場したこの小説と、人々が漠然と感じていた「世紀末」や「一つの時代の終わり」という節目が相互に影響し、そこに「世界の終わり」を読み取ろうとした読者も少なくなかったのではないかと思います
19世紀末、人々は世界の終わり、破滅の到来に恐れおののきパニックになる人が大勢いたとの話が残されています。そうした人々の不安も相俟ってオカルトめいた怪しげな団体がいくつも登場し、多く賛同者を集めました
話を戻します
自分はこの作品を「個人の喪失」や「世界の崩壊」あるいは「世界破滅」の物語としてではなく、「個の再生」の話であり、「個人と世界との関係を再発見」する物語として読みました
言語学者フェルディナン・ド・ソシュールは言葉を物の名称ではなく、概念を切り分けるための道具だと考えました
つまり「犬」という名称を与えることで哺乳動物の中に「犬」という概念が生まれ、他の動物との違いが確立するわけです
人間の存在も社会の中で、他者との関係によって位置付けられています
A君のママ、Bさんの夫、C会社の課長、Dさんの隣に住んでいる人、という具合です
もしC会社が潰れてしまったり、会社から解雇されてしまったなら自分の帰属を失い、社会の中で自分を位置づけていた関係が失われてしまうわけです
他者と関係付けられなくなっり、個として放り出される自分とは何者なのでしょうか?
帰属とは帰るべき場所なのですが、帰るべき場所を失った人間はどこへ向かい、どこへたどり着けばよいのか。そんな問いがこの小説を形作っているのだと思います
村上春樹の小説では、しばしば人の関係が失われ(自殺であったり失踪であったり)、主人公は個として放り出されます。その繰り返しは結局、自分は何者であるのかという根源的な問いなのだろうと考えるのです
さて、新作の方も「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」のように二つの物語世界が絡み合って語られるものだそうですが、どのような話になっているのでしょう。楽しみです
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