潔癖症と小説家泉鏡花

小説家泉鏡花は明治末から昭和初期にかけて活躍した流行作家です

エピソードの豊富な人ですが、その中には彼自身の潔癖症に関するものが

多く伝えられています

外出する際にはアルコールの消毒器を持ち歩き、いつでも手を消毒してい

たとか、家の中では蝿がとまるのを嫌って煙管の吸い口や鉄瓶の注ぎ口に

はいつも紙のキャップをしていた、とあります

あるいは日本酒を飲むにも沸騰するくらい熱く燗をし、ふーふーと冷ましなが

ら飲んでいたそうです。外に出る際には魔法瓶に熱々の酒を詰めて持参し

といいますから、かなりの重症です

こんな習癖をもった夫の世話をした夫人はさぞかし大変だったろうと思いま

すが、夫婦仲はきわめてよかったと伝えられています

夫人は神楽坂の元芸妓であり、二人の仲を知った鏡花の師匠尾崎紅葉は

「作家になるのを諦めるか、女と別れるかどちらかにしろ」と迫まりました

鏡花は師匠尾崎紅葉を崇拝していたので一旦は別れるのですが、紅葉の

死後結婚しています

このとき恋人と別れた経験が名作「婦系図」の元になっています

「婦系図」は演劇にもなり、映画化もされています。愛し合いながらも気持ち

が行き違い、別れ別れになる男女の悲哀を描いた名作であり、鏡花の繊

細な感覚が感じ取れます

さて、鏡花の潔癖症の原因が何であったのかは分かりませんが、生まれて

すぐに母親を亡くしている経験が大きな影響を与えたと思われます。病気に

対する恐怖が汚いものへの恐怖となり、極端な潔癖症へと駆り立てたので

しょう




婦系図 (新潮文庫)
新潮社
泉 鏡花

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