セレブ妻バラバラ殺人事件を考える 3

夫による暴力がどのようなものであれ、世間の人がそれを十分に理解しているとは限りません
「殴られるのは妻の方にも原因があったから」と受けとめる人がかなりいます
こうした反応は男性の側に多いようで、ドメスティックバイオレンスの問題を理解してもらうのがいかに困難かを示すものです
また、「(夫婦間の暴力については)夫婦で十分に話し合うべきだ」と事態の深刻さを軽視する反応もあります
あるいは、「夫の暴力というのは妻が勝手に作り出したフィクションであり、おおげさに誇張し周囲の同情を惹こうとしているに過ぎない」と切り捨てる見方をする人も必ずいます
周囲の無理解と、孤立感が今回の事件では被告人を追い詰めた形です
事件については公判記録を参照してください


三橋歌織被告は年下の男性と知り合い、結婚に踏み切ります
司法浪人で定職につかず、アルバイトをしている男性を頼りないと見たのか、三橋被告の親は結婚に反対したのでしょう
その反対を押し切って結婚したのですから、三橋被告と実父の間には対立が生じました
三橋被告は夫の暴力から逃れるため離婚を決意しますが、実父との葛藤が原因で実家を頼ることができない状態でした
それでも一度家に戻っていますが実父とケンカをして飛び出しています
勝手に推測すれば実父が、「あんな男と勝手に結婚しておいて、今度は離婚するのか。だからあんな男はやめておけと言ったんだ」などという類の発言をしたのでしょう
ですが、実父がこうした発言をするのも娘を憎んでいるからではなく、その身を案じるがゆえの苦言です。もし三橋被告が自分の勝手な結婚について実父に一言侘びを入れたなら、事態は別の方向へ進んだに違いありません
この事件の状況によく似た相談に対処した経験があります
やはり実家の両親の反対を押し切り恋愛結婚した女性なのですが、夫の暴力に我慢できず離婚を考えていました。しかし、結婚が原因で実家とは疎遠になってしまい、いまさら実家をを頼れないと悩んでいました
自分は彼女に、「嘘でもいいから、芝居でもいいから実父の前で大泣きし、わびてみたらどうですか。娘の涙を見て心を動かさない父親はいませんよ。離婚後の生活を考えればそれくらいはできるでしょう」と助言しました
つまり泣き落としです(古臭い手ですが)
三橋被告は自分のプライドを捨ててまで、わびたり助けを求めるる気にはなれなかったのでしょう。それが不幸な結末をもたらします

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