セレブ妻バラバラ殺人事件を考える 2
検事の役割が多少なりとも世間から注目されるようになったのはテレビドラマ「HERO」の影響のためでしょう
しかし、この事件で取り調べを担当した検事は久利生公平とは段違いのようで、被告のことばにまったく耳を傾けようとはしなかったようです
夫を殺害して遺体をバラバラにし、捨てたという犯罪事実を被告は最初から認めていたため、「この事件は楽勝」と思ったのでしょうか?
自分で思い描いた筋書きにしたがって被告人に供述させようと迫り、押し付けます
そもそも犯罪事実に争いはないのですから、被告の語るがままにまかせても十分が供述は引き出せたはずですし、情状酌量の判断がどうなるにせよ有罪判決を得られたでしょう
検事の取り調べと心理臨床はまったく異なる場ですが、被告の中には誰かに話を聞いてもらいたいという衝動があったはずで、検事が聞き役に徹すれば被告は水があふれるように語りまくったと思います
夫の暴力について、結婚生活について言いたい事は山ほどあったのですから
もちろん被告の供述の中にはいいわけも嘘も混じっているのでしょう
が、真実も多く含まれています
それを聞き分けるのがプロの仕事です
取り調べを担当した検事はよほど能力が低いのか、あるいは妻から離婚を突きつけられイライラが募っていたのか、と勘繰りたくなってしまいます
ともかく、犯行は残虐非道であり被告の行動にはひとかけらも同情の余地はない、と決め付け検事は起訴状を作成します
しかし裁判では被告人の責任能力が問題とされ、2組のチームが精神鑑定を実施しますが、結果としてどちらの鑑定も「犯行当時、被告に責任能力はなかった」と判断しました
こんな展開は検事の想定外であり、あわてます。あわてて精神鑑定のやり直しを裁判官に求めますが、退けられます
メディアは「精神鑑定で責任能力が否定された以上、無罪になる」と大々的に報じました
楽勝と思っていた裁判が一転、検察側の大敗北に終わる見込みとなったのですから担当検事は大恥をかかされた気分だったでしょう
判決では懲役20年の求刑に対し、15年の刑を言い渡しました
精神鑑定では「犯行当時、責任能力はなかった」と結論付けられましたが、裁判官は「責任能力の有無は裁判所が総合的に判断する」として鑑定結果を退けています
この結果を受けて担当検事はほっとしたのでしょうか。おそらくは自分の面子を傷つけられたと怒りまくったのではないか、と推測します
ですが、検事が被告の供述をもっと引き出し、夫を殺害するまでの経緯や心の葛藤を浮き彫りにできたなら犯行時の責任能力の有無は問題にされなかったかもしれません(あくまで勝手な推測です)
検事が独断と偏見で思い描いた稚拙な筋書きを押し通し、粗雑な供述調書をでっち上げた結果、犯行時の責任能力が疑われたのだと自分は思うのです
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