小説「肩ごしの恋人」
2002年に直木賞を受賞した唯川恵の小説「肩ごしの恋人」を取り上げます
女性作家の恋愛小説を読んだのは、中学生のときにエミリー・ブロンテの「嵐が丘」を読んで以来でしょうか。他は記憶にありません
登場人物の間で交わされる会話が中心にストーリーが展開するところは、テレビドラマのようです
そういえばドラマになっていました。たまたまテレビを見たら米倉涼子と高岡早紀が出演しており、思いがけずさっぱりとして演技で楽しめました
米倉涼子といえばドロドロの愛憎劇というイメージがあったのですが、NHKの大河ドラマよりもリラックスして演じており、女優としての成長を感じました
意外だったのは高岡早紀の方です。不倫報道で話題になるタレントというイメージが強く、演技者という見方をまったくしていなかったのですが、ドラマ「肩ごしの恋人」では米倉涼子と対称的な女性を好演しており驚きました
さて、小説の方に話を戻します
直木賞の選考では「この小説が直木賞に値するのか。軽すぎないか」と受賞に反対する声もあったようです
しかし、嫌味がないほど軽やかに颯爽としている登場人物の言動は、決して作品が軽いとか小粒だという批判ではとらえきれないものでしょう
ねっちりとした文体で現代社会の病理を描く手法もあるわけですが、「肩ごしの恋人」のように登場人物がすっぱりと自分の考えや価値観を口に出して言ってのける(発言させる)手法もあるわけです
登場人物たちの交わす数分の会話から、その人となりが浮かび上がってくるように計算され、描かれているのです
小説の冒頭、数ページを読んで作品の世界観や人物像が掴めないと投げ出してしまう読者もいるそうですが(自分はもったいないので、詰まらなくても最後まで読み通しますが)、唯川恵はそうした事情も考慮した上で書いているのでしょう
「大傑作」とは言いませんが、一読に値する作品だと思います
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