狼に育てられた少女
ロシアで「犬や猫に育てられた」5歳の少女、警察が保護した、というニュースをロイターが配信しています
話の真偽は不明ですが、こうした話題は時折世界各地で出現します
一番有名なのはインドにおける「狼に育てられたアマラとカマラ」の話です
手許にある古い心理学の教科書「児童心理学」(新曜社、昭和56年版)にも、この狼に育てられた少女の話が載っています
「人として育てられるべき環境で生育しないと、人間らしさを身につけられず言葉も話せないまま大人になってしまう見本」として引き合いに出される事件です
しかし、その後の研究によってアマラとカマラが狼に育てられたという事実は否定され、二人は捨て子だったのだろうという結論に至ってます
二人は先天的な知的障害、あるいは重篤な自閉症であり、母親が育児を放棄して森に捨てたのではないか、と推測されます
ですから言葉を学習できなかったのは狼に育てられたためではなく、知的障害が主たる原因です
ヨーロッパから中央アジアには昔から、「狼に育てられたこども」にまつわる伝承があり、森の中で二人の幼児を発見した人物もその伝承どおり、「これは狼に育てられたこどもにちがいない」と思い込んでしまったのです
ローマを建国した英雄も狼によって育てられた双子、と言い伝えられています
事実を検証せず、思い込みがつい最近までまかり通っていた実例です
先日来、このブログでは11歳から12歳の少年少女が犯した犯罪について繰り返し取り上げてきましたが、アスペルガー障害であるということと犯罪との間に明確が因果関係があるわけではなく、「アスペルガー障害だから事件を起こしたのだ」と結論付けるのは誤りです
「アスペルガー障害」だったとしても、それは何の答えにもなりません
精神障害者が犯罪を起こすと、「精神障害だから犯罪を犯した」と言われるわけですが、犯罪を犯す人間の中で精神障害者が占める割合は決して高くないのです。むしろ、健常者が多数を占めているわけで
予断、思い込み、先入観、偏見が事実を歪めるのだと、気をつけなければなりません
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