小学六年生女子児童による殺人事件 4

この事件について取り上げた本が何冊か出版されているのですが、その中から草薙厚子の「追跡!佐世保小六女児同級生殺害事件」を取り上げます
草薙厚子は少年事件を取り上げたルポルタージュに取り組んでいる人物ですが、その取材姿勢や本の作り方について批判の的になっています
最近でも奈良県での放火殺人事件を巡り、精神鑑定を担当した医師のところへ押しかけ裁判記録を無断でコピーして丸写した本「僕はパパを殺すことに決めた」を出版し、騒ぎを引き起こしています
さて話を戻しますが、草薙は「こんな事件を起こすこどもが普通のこどもであるはずがない」との思いから取材を開始したと書きます。それはともかく、加害児童が「広汎性発達障害」の一種である「アスペルガー障害」だったというところからまったく先へ踏み込んでいません(注*「アスペルガー障害」は「発達障害」の一種とされますが、「広汎性発達障害」は「アスペルガー障害」ではなく別の症状と考えられます)
アスペルガー障害だとしてなぜ犯行に至ったのか、もっと深く考察を進めなければ事件について語ったとは言えないのです
全体が加害児童の親への批判、学校への批判、司法制度への批判が占めており、「告発してやる」という姿勢がそこにあるだけです
「いったい何を闘っているのですか?」と質問したくなります
アマゾンにあるレビューがこの本と著者について端的に表現しています


ささいで断片的な事実を強引に結び付けたうえに、「アスペルガー障害」だから「普通の子」じゃなかったという馬鹿げた結論で終わり。もともと最終審判要旨みれば広汎性発達障害に近いと書いてあり、そんなこと がそれほど重要なのか。障害に早く気づけばというが「ゲーム脳」理論のような妄想信奉者の著者がそんなこと を言うのがばかばかしい。
気づいていじめるのか、病棟にでも隔離するのか。
A子の「内面に近づく」と言っておいて、「刺しても死ぬと思っていなかった」とか「映画の影響」でおきたとか さんざんメディアの振りまいた妄想ばかりが適当に繰り返され、何ら事件のことも、加害者の事も見ていない。
結局「障害」ということで、切断操作をすることが目的となり、いかなる理解もはじめからしようとしていない、 人間扱いしていないということだ。
特に加害者の父親に対する偉そうな糾弾の態度には吐き気がした。明らかに加害者の父親もそういう(娘に似た社会性の遅れ)資質を持っているのに、 彼の対応が自分の感性から見て気に食わないからと、ことあるごとにケチをつけ、くだらない正義感でリンチして喜ぶ。発達障害への理解もクソもない。
子供をダシに商売するのもいい加減にしていただきたい。


アスペルガー障害だとしても、犯行に至るまでには加害児童なりの葛藤があり、その犯行にも加害児童なりの意味があったはずです
ただ、著者にとって都合の良い事実だけを選び出して並べ一冊にするという方法がジャーナリズムと呼ぶに値するものなのか疑問です
草薙は非行問題の専門家を自称していますが、中心となる非行理論さえ持ち合わせていないのでしょう
たとえば社会学の側から論じる方法もありますし、学習理論から論じる方法もあります。発達理論から論じる方法もあれば、心理学の側から論じる方法もあるわけです
ただ「アスペルガー障害だった」と書いてすべてを指摘したつもりになられても困るのです
草薙本人は「広汎性発達障害についてもっと知ってもらいたい」と発言していますが、彼女のやり方は誤解を広める結果にしかなりません

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