長い夢の終わり 映画「ユリシーズの瞳」

カンヌ映画祭も始まりました。引き続きこちらも映画の話を
テオ・アンゲロプロス監督の映画「ユリシーズの瞳」は95年カンヌ国際映画祭グランプリ(審査員特別大賞)を受賞しています
カンヌ映画祭の場合グランプリは一等賞ではなく、あくまでパルムドールが一等賞です
アンゲロプロス監督の「旅芸人の記録」などを観た方にはおなじみの展開で物語が進みます。つまり「現時点の場面」と「過去の追憶の場面」が前置きなしに入れ替わるのです
初めて観る方は混乱すると思いますが、「人は己の中に過去と現在が複雑にからみあった思念を保持しており、決して過去から切り離されて自由ではいられない」のだという監督のコンセプトと受け止めてください
長い作品のためストーリーを追いかけるのも大変ですが、自分にとっては夢の中をたゆたう感覚で楽しめました
もちろん否定的な意見もありますが


アニメーション監督の押井守は「思い出をその記憶と分かつものは何もない。 そしてそれがどちらであれ、それが理解されるのは常に後になってからのことでしかない」 との言い回しを好んで使います
人間は事実を記憶しているのではなく、多分の主観によって脚色され誇張された思い出を溜め込んでいるのであり、それは想起されるたびにとめどなく変化するものです
映画のフィルムに焼き付けられた記憶は色あせはしますが、変化はしません
「ユリシーズの瞳」は古い映画フィルムを手に入れるため、内戦の激化するユーゴスラビアへと向かう映画監督が、さまざまな過去の思い出と遭遇しつつ旅をする物語です


ユリシーズの瞳



(関連記事)
映画監督テオ・アンゲロプロス 交通事故で亡くなる
韓国映画「マイウェイ」大コケ
第64回カンヌ映画祭 日本からは2作品がエントリー
市川海老蔵の映画「一命」 大コケ
カンヌ審査員賞 是枝監督「そして父になる」
是枝監督のパルムドール受賞を羨む中国
アカデミー賞「パラサイト」の一方で日本映画没落?


テオ・アンゲロプロス全集 I~IV DVD-BOX II
紀伊國屋書店
2004-06-19

ユーザレビュー:
幻のフィルムユリシー ...
amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ウェブリブログ


この記事へのトラックバック