なぜ人を殺してはいけないか その2
続きを書きます
インターネットでこの問題に関連する掲示板のログやウェッブサイトを調べて周り、資料として保存してあります。もちろんすべてを網羅するなど不可能で、限られた情報でしかありません
手許の資料によればNHKの番組が放送される前、1998年に法政大学で開催された「全国唯物論研究協会」全国大会でのシンポジウムのテーマは、「現代日本の倫理的危機~若者が『なぜ人を殺してはいけないのか』と問う時代に~」であり、豊泉周治(社会学)、藤谷秀(倫理学)という活躍中の研究者が問題提起をおこない、3時間半を超える議論が行われたとあります
ですから1998年にはシンポジウムのテーマに選ばれるほど、切実な問題として認知されていたわけです
その切実な問題とされる状況を作り出したのは、1997年5月に起きた神戸市における14歳の少年による児童殺傷事件(酒鬼薔薇聖斗の事件)です
その後筑紫哲也の「NEWS23」において、男子高校生が「なぜ人を殺してはいけないのか分からない。自分は法律があるからやらないだけだ」という趣旨の発言をしたのに対し、筑紫哲也らが言葉につまり即答できなかった一幕もあり、この素朴な問いが難問として注目されたのです
残念ながらこの番組を自分は見ていません
当時は他にも世間を騒がす少年事件が発生したため、学校はもっと命の大切さについて教育すべきだ、と叫ぶ人が相次ぎました
当然、こどもから発せられるであろう「なぜ人を殺してはいけないか」との問いに「模範回答」を用意する必要があったわけです
いわば大人の側の事情ってやつです
経緯を細かく書き記せばキリがないので止めますが、関連本も多く出版され、世の大人たちが模範回答を求めて殺到したのは前回書いたとおりです
ではこの問いと論争が何かをもたらしたのでしょうか
まったく無意味ではなかったと思います
前回も述べたように議論が拡散してしまい、あちこちの分野へ飛び火する結果を招きました。死刑廃止を巡る論争、尊厳死を巡る論争、脳死問題や中絶の問題などです
これら個別の論争はまだ継続中であり、答えは出ていません
おそらくは答えなど出ないのでしょう。論争が続くことに意義があると見るですが、どうでしょうか?
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