東電OL殺人事件
1997年3月に起きた事件で、被害者女性の私生活の暴露合戦のような派手な報道がされたため記憶されている方も多いと思います
事件の詳細についてはまとめたウェッブサイトがありますのでそちらを読んでください
この事件について取り上げたのは、昨日も触れた和歌山毒入りカレー事件の「動機が不明」という点に関する私的な考えの延長です
といっても自分が語りたいのはこの事件で犯人として逮捕されたネパール人男性の犯行動機ではなく、被害者女性の奇矯な行動の背景の方です
上記のウェッブサイトを読んでいただけるとわかりますが、会社ではまじめに仕事をこなしていた女性が夜になると豹変し、街で売春婦まがいの行動をしていたところに好奇の視線が集まり、さまざまに報道されました
彼女について「二重人格だった」とする奇抜な説を唱えた人物もいました
被害者女性が殺害されており、彼女自身が何を考え売春行為を繰り返していたのかは不明です。つまり動機については何も分からないのです
そこで勝手ながらいくつかの推論を立ててみます
これは自分の勝手な推測であり事実関係に基づくものではありませんし、被害者やその遺族を貶める意図をもって書くものではありません
最初に注目すべきなのは彼女が売春行為を繰り返していたところではなく、摂食障害であったという点です
摂食障害は食べ物に対する異常な執着による過食行動と、痩身願望による拒食行動だと思われがちですが、こうした考えは表面だけしか見ない誤った理解です
根底にあるのは何らかの強迫であり、それが異常とも思える行動へと駆り立てる原因です
彼女の場合その直接の原因が何であったのかは不明なのですが、19歳のときに父親と死別しているところから、父親の死が影響を及ぼしていると推測されます
「彼女はマゾヒストだった」と断定すれば話は簡単なのでしょうが、それは何も説明していないのと同じです
おそらくは何かのきっかけがあり、「自分は悪い娘であり処罰されなければならない」との妄想が彼女の中で組み上げられていったのだと思います
処罰するのは父親です。これは近親相姦のイメージが置き換えられたものですが、現実に近親相姦があったというのではなく、妄想の中で生み出されたストーリーです
そうやって彼女自身が作り上げた架空のストーリーを演じ、わずかな金のために体を売る娼婦として振る舞うのです
それは「ふしだらな娘」という自分に対する罰であり、罰を与えるのは父親で、その罰を受けたいがために売春を繰り返す・・・・という堂々巡り
罰とは禁忌としての近親相姦であり、決してかなえられない欲望です
なぜなら父親はすでに亡くなっているわけですから
ビール瓶を拾って換金するのも、「わずかな金でも稼ぎ、父親に差し出さなければならない女の子」という架空のストーリーによるものだと解釈されます
神経症の人はそうと自覚しないままさまざまな設定を作り出し、複雑なストーリーを練って自らをそこに縛りつけてしまうのです
以上は確認のしようもない勝手な憶測です。彼女の内面世界がどのようなものであったかは分かりません
おそらくは彼女自身も、何に自分が駆り立てられているのか(架空のストーリーは別にして)、分からないままだったのではないでしょうか
「自分については本人自身が一番分かっているはず」との考えはいつでも当てはまるわけではありません
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