熱血コーチ

以前、甲子園の常連でもある名門野球部がある高校の近くに住んでいたことがありました
毎晩、10時少し前に野球グランドの方から声が聞こえてきます。選手全員でランニングをする際の掛け声です
午後3時に授業が終わったとして、夜10時まで練習をしているわけです
それくらい練習しないと甲子園には行けないのでしょうね
野球選手として甲子園出場を目指しながらも、途中で挫折した少年の話を書きます
少年は甲子園へ出たくて私立の野球名門校へ進んだのですが、野球部は新入生だけでも20人以上いて、レギュラーの座をつかむのは相当難しいという現実に直面したのです
最初の1年は我慢したのですが、2年生になっても自分がレギュラーの座に手が届かないと分かったとき、野球への興味を失ってしまいました
小学生のときから野球漬けの生活をしてきただけに、野球への興味を失ってしまうと自分が何をしてよいのか、何をしたいのかさっぱり分からなくなって途方にくれた状態だったのでしょう
そんなとき、中学時代のコーチから手紙が届きます
中身は熱い、熱い激励の言葉で埋め尽くされていました
「初心を忘れるな」とか「夢をあきらめるのか」などの文言がこれでもか、とばかりに書かれていたのです
ですが、そのコーチの手紙がきっかけになり少年は心情が不安定になります
いわゆる体育会系の人間関係の中で育った彼にとって、コーチの主張する「情熱」や「根性」、「やる気」というのは体に染み付いた真理であり、絶対に正しい価値観なので反論する余地はありません
しかし、野球への意欲を失ってしまった彼にはその正しい価値観に従って行動する動機をなくしていました
結局、部活動どころか登校もできない状態に陥ってしまいました
ところが熱血コーチは週に2通も3通も激励の手紙を送り届けてきます
もちろん熱血コーチは自分がやっている、「教え子を励まし、勇気づける」行為の正しさを疑ったりしません。「こんなに心配してやっているんだぞ」と、その情熱をぐいぐい押し付けてくるのです
コーチの考え方からすれば、名門校野球部の一員になったからにはレギュラーになれなくても毎日練習に参加し、チームに貢献する姿勢を示し続けるべきなのでしょう
レギュラーになれないから諦め、投げ出すなどもっとのほかだ、と
コーチの考え方、価値観、人生観を頭から否定するつもりはありませんが、自分の主張を押し付け屈服させ、コントロールしようとするのは誤りです
他人の人生の選択に干渉すべきではありません
この少年の場合、不登校、家庭内暴力などなどさまざまな問題に発展します
それがすべて熱血コーチの責任、というわけではないのですが

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