長距離走者の孤独

タイトルはアラン・シリトーの小説ですが、今回は陸上選手の話です
もう何年も前ですが、陸上女子マラソンの期待の星として注目された選手が大会の途中、他の選手に接触され転倒する事故に見舞われました。結果は完走だったか途中棄権であったのか記憶していませんが、その後彼女の選手生活は暗転します
実業団のチームに所属していたのですが実家へ戻ってしまい、練習にも復帰できない状態が続きました
それからようやく気持ちを建て直し、復帰のために猛練習をします。そして復活をかけたマラソンに挑んだのですが
結果はレース途中で足の痛みを訴え途中棄権・・・
監督に支えられながら泣きじゃくる姿はテレビで見ていても痛々しいものでした
以下は自分の勝手な憶測です
足の痛みは彼女本人にしか分かりませんが、それは筋肉の異常ではなく心因的なものだったのではないかという気がします
前回のレースで接触、転倒という事態に見舞われ不本意な結果に終わりました。彼女の気持ちの中ではまだあのときのレースが完結しないまま、「もしトラブルに遭わなかったら」という思いをひきずっていたのではないでしょうか?
そして復活をかけた猛練習の日々でも、「また途中で何かアクシデントが起こるのではないか」という不安、「完走できずに途中棄権するのではないか」という恐れが拭いきれず、残留していたと考えます
練習によって自信をつけるとの考えは正しいのでしょうが、不安を否定し不安を押し殺すだけでは問題の解決にはつながりません
練習の合間に数回でも、彼女が自分の不安と向き合い、不安の由来や不安の正体について洞察する機会があったなら、もっと違う結果になっていたのではないか、と考えてしまいます
現在ではメンタルトレーニングによる精神面の強化とか、コーチング技術のあり方についていろいろ取り上げられますが、選手を心理面からサポートする体制はまだまだ不十分だと思います
天性の素質と努力を重ねてきたアスリートが、一回の挫折で自分を見失ってしまうのは残念であり大きな損失です
あるいは中学生や高校生レベルでは十分な心理面でのサポートなど皆無とも言える状態ですから、将来性のあるこどもが若いうちに挫折し、そのまま放置されているのが現実でしょう
スポーツ指導者の育成も重要ですが、若い選手たちを心理面でサポートできる専門家が多く世に出て欲しいと思います
「メンタル面の強化」という考え方は、アメリカ流自我心理学に由来するのでしょう
弱い自我を補強し、強くしてやればプレッシャーに負けずに潜在能力を十分に発揮できるようになる、といった発想は、運動選手にとって受け入れやすいのかもしれません

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