常にクールでいなければ
韓国を代表する電子機器メーカー「サムスン」の会長が以前、「ノーベル賞級の人材をスカウトせよ」と社命を下した、との記事を読みました
要するに、ビル・ゲイツのような優秀な人材を確保できればその人物一人でマイクロソフトのような巨大な優良企業(数千億円の売り上げと数百億円の利益)を創設し、入手できると考えたようです
目先の利益しか見ようとしない、実に短絡的な発想です
こんなくだらない思いつきを、「どうだすごい発想だろう」と部下に押し付けるのですからあきれます
自分の発想に酔い、現状を冷静に見れなくなってしまう企業経営者だけの話ではありませんが
企業に必要なのはこんな愚かな発想しかできない経営者ではありませんし、一人の天才発明家でもありません
それぞれの部署できちんと責任を果たす社員ではないでしょうか
一人の天才、風雲児が困難を乗り越え巨大な企業を起こすサクセス・ストーリーは、話としては楽しめますが
創業者の活躍を描いた本というのはビジネス書の中でも根強い人気を誇る分野です
しかし、その多くは筆者が主人公に入れ込みすぎ、距離が取れなくなってしまってベタボメの提灯記事になってしまいがちです
かつてはダイエーの創業者中内功を褒め称えた本が雨後のたけのこみたいに出版されていました
ダイエーが結局、創業者である中内の独善的なやり方に振り回され、莫大な借入金と赤字を抱え込んで立ち行かなくなったのは周知の事実です
中内をカリスマ経営者として持ち上げ、本を書いていたジャーナリストや経済評論家はいま何を思っているのでしょうか
一人の天才が巨大な企業を創設して成功させることもあれば、駄目にしてしまう例もあるわけです
その成功の華々しさに目を奪われ、惚れ込み、すっかり同化してしまったのでは評伝など書けるはずもありません
いかに対象を突き放し、距離を置くか。距離を置くのは対象を冷静に観察するためでもあり、必要以上に惚れ込まないためでもあります
心理臨床家はしばしば「冷たい」とか「よそよそしい」とか、「近寄りがたい雰囲気」があるなど批判されますが、それは職業上必要だからです
「皆から好かれたい」とか、「いい人だと思われたい」といった欲求はもちろん誰にでもあるわけですが、それを自分で意識し抑制できない人は臨床家に向きません
カリスマ―中内功とダイエーの「戦後」〈上〉 (新潮文庫)
新潮社
佐野 眞一
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