突撃おばさん

勝手にそう呼んでます
ひきこもりの青年の部屋に突撃し、引っ張り出して「あんた、何やってんのよ」と檄を飛ばし、立ち直らせると評判のおばさんで、夕方のニュース番組でも取り上げてました
そのおばさんがひきこもり青年を自立させる施設(NPO法人)を運営していたのですが、暴れる青年を鎖で柱に縛りつけ死亡させたため刑事事件となり、逮捕されました
新聞の報道などでご存知の方もいるだろうと思います
突撃おばさんはニュース番組の中で、「カウンセリングを勉強した」と語っていましたが、あやしいと思ってます。どこで、誰に師事したのかは語りません。おそらくは独学、もしくは自己流なのでしょう
過去にひきこもりの青年を叱咤激励し、仕事に就く状態まで導いた経験があり、その経験を唯一のよりどころとして自己流の指導を続けたのだと推測します。理論的な裏づけもなく自己流のやり方で成功すると、それを反復しさえすれば問題が解決できるのだと思い込んでしまう危険があります
通常は理論や過去のケースと照合し、どこがどう違っているのか、あっているのか、自分の方法に問題はないか検討するのですが、突撃おばさんはケース研究もせず、背景となる理論も持ち合わせていないため、暴走してしまったのでしょう
こうした無謀な取り組みがビジネスになってしまうのは、ひきこもりの息子や娘を何とかしてもらいたいと切に願う親がいるためでもあります。もちろん、親の切迫した心情は十分に理解できるのですが
突撃おばさんが注目され、そこを頼ろうとした人がいた理由はいくつか考えられます
第一に手っ取り早く問題を解決したい、という親の気持ちがあげられます
こどもがひきこもりになった理由などどうでもよくて(誤解を招く表現ですが)、それよりもこどもがすぐにでも学校に通うようになってほしい、就職してほしいとの願望です
時間をかけて問題を探り出し、徐々に行動の改善を図る、なんてまだるっこしいやり方ではなく、即効性のある解決策がほしいのです
しかし、早急に解決を求めるのは無理があります
学校へ行かない不登校児童を例にすると、対処方法は大きく分けて三つになります一つは不登校になった原因を探り出し、その問題解決や心のケアを行う心理療法
もう一つは不登校の原因究明はさておき、不登校という行動を改善するべく段階的に取り組ませる行動療法。誰もいない日曜日に学校へいってみるところから始めて、学校の保健室や相談室に通えるようにし、徐々に教室にも顔を出せるよにする、というやり方です
三つ目には心理療法と行動療法を組み合わせて用いるやり方です
どれも時間がかかる方法であり、即効性はありません
突撃おばさんのやり方はこれら三つのどれにもあてはまりません
児童・生徒なら学校があれこれ対応を考えてくれますが、高校中退や成人になってひきこもっている人の場合、積極的に対応してくれる窓口は限られます
「ひきこもりになった理由などどうでもよくて」と不遜な表現を使いましたが、成人になった息子や娘がひきこもっていたとして、その理由・原因と向き合うというのは親にも難しいからです。ひきこもりを理由を訊ねたところで答えは返ってきませんし、原因をさぐるべく親が娘の日記を盗み読みするわけにもいきません
さらには何らかの挫折体験が理由だったとしても、親には慰めの言葉をかけるとか見守るくらいしかできないのです
さて、次はもう少し踏み込んで考えてみたいと思います

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