「海は甦える」
江藤淳の小説「海は甦える」(文春文庫)は明治維新後の近代海軍の創設から日清、日露戦争までを描いた歴史小説です
物語の中心に山本権兵衛(海軍大臣、首相)を据え、政治ドラマとしてもよく描けていると思います
ですが、同じ時代を描いた司馬遼太郎の歴史小説「坂の上の雲」ほどは評価されていないようで、最近ではすっかり忘れられた作品になっているのが残念です
テレビドラマ化されたので、そちらを記憶されている方もおられるのではないでしょうか
髭の若い海軍士官(山本権兵衛)が女郎屋に乗り込み、女郎を連れ去る場面が記憶に残っています。彼女は後に山本権兵衛の妻になる女性です
昔の人は随分と豪胆だったのだな、と驚かされました
女郎を足抜け(逃亡)させようとすれば殺されても文句が言えない、そんな江戸時代の空気が色濃く残っていたはずですが
江藤淳の父方や母方の親戚は海軍関係者が多く、明治時代を描く行為は祖父らの生きた時代を描く行為であり、自分のルーツを確認する行為でもあります
海軍関係者は陸の上でも結束が強いとされています。同じ船に乗り合わせ、生死を共にする生活をする中で、独特の連帯感が醸成されるようです。当然、そうした人生観や価値観が家庭に持ち込まれ、そこで育つこどもたちにも影響を及ぼすのでしょう
さて、江藤淳はこの歴史小説を書きながら何を思ったのやら
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